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冬アイテム専門用語を知ろう!起毛・毛玉(ピリング)・抗ピリング加工について

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冬アイテム専門用語を知ろう!起毛・毛玉(ピリング)・抗ピリング加工について



寒い冬は、アウターもインナーも防寒対策が必要になりますね。

冬の衣類には、あたたかさや肌触りを高めるためにさまざまな加工がされています。

 

冬アイテムを探していると、タグに「起毛」「毛玉(ピリング)」「抗ピリング加工」など、あまり聞きなじみのない専門用語が並んで

「どういう意味?」と考えてしまい方もいるのではないでしょうか?

 

今回は、冬のアイテムに使われる専門用語の意味をわかりやすく解説していきますので、お買い物の際にお役立てくださいね!




起毛とは?冬に人気の「起毛加工」について



はじめに冬アイテムでよく目にする「起毛」について解説します。



起毛加工とは

起毛とは、その名の通り「生地表面を引っかいて毛羽立ちを起こす」ことです。

衣類の表面をふわふわにして柔らかい質感を引き出すので、あたたかな風合いを生み出すことができます。

 

製法としては、針布やアザミ(植物)を巻いたローラーを回転させ、その上に生地を流す事によって、生地表面から繊維を引っかき出す方法です。

起毛がいつ頃から始まったかは定かでないですが、古来より行われており、ポンペイ遺跡の壁画にも、手作業での起毛の様子が見られるそうです。

 

アザミを利用した起毛機が最初に作られたのは1684年で、その後、フランス、イギリスにて改良と革新が重ねられ、1890年には現在のような針金起毛機となりました。

起毛加工が施された生地には、フランネルやコーデュロイ、スウェットなどがあり、触り心地の良さと保温性が特徴です。


起毛加工のメリット・デメリット

〈メリット〉

起毛加工は表面に毛羽を作ることで、保温効果が高まるため冬の寒さ対策にぴったりです。

また、肌触りが柔らかく心地よいことから、肌に直接触れるインナーに使用されることもあります。

 

〈デメリット〉

起毛は摩擦に弱いため、使用や洗濯を重ねるうちに毛羽立ちが落ちてしまうことがあります。

特に、摩擦が生じやすい部分は毛羽が抜けて薄くなりやすいため、洗濯時に注意が必要です。




毛玉・ピリングとは?発生の仕組みと対策


冬の衣類の悩みの種といえば「毛玉」ではないでしょうか?

毛玉が発生する仕組みと、毛玉を作らないようにするための対策をご紹介します。


毛玉・ピリングとは

ピリングとは、繊維同志が擦れることで繊維の表面が毛羽立ち、絡み合ってできる毛玉やその現象のことです。

毛玉は、英語で「pilling」または「pill」。

ですから、起毛している生地は、すでに毛羽立ちしていますので、程度の差こそあれ、必然的にピリングが発生します。

 

ピリングは糸の撚り数が少ないものや密度が粗い織・編物、繊維強度が強いものに生じやすく、冬アイテムの代表格のセーターなど太い糸で編んだニット製品や合繊製品などで起こりやすいです。

着用回数が増えたり洗濯を繰り返したりすることで徐々に目立つようになるため、困っている方も多いのではないでしょうか?



毛玉ができる原因

主に衣類の摩擦で生地同士が擦れることで静電気が発生し、繊維が絡み合うことによって毛玉となります。

洗濯、歩行、着席してひじ掛を使うとき、靴を履くとき…など何気ない日常の動作が毛玉発生の原因になっていることも…。

 

特にアクリルやポリエステルなどの化学繊維が含まれた生地やウールなどの天然素材では、繊維同士の絡まりやすさから毛玉ができやすい傾向にあります。

具体的には、セーターの袖口や脇の下、カーディガンの脇など、動きやすい部分に毛玉が発生しやすいです。

 

反対に毛玉ができにくい素材としては、麻・シルク・コットンなどが挙げられます。

毛玉ができると見た目が劣化しますし、着古した感が出てしまい「清潔感」の点でマイナスのイメージを与えかねません。

毛玉がひどくなると生地自体が傷む可能性もあるため、適切な対策が必要になるでしょう。



毛玉対策

毛玉を防ぐ対策として、自宅でできることを挙げてみましょう。

 

  • 着用した衣類はブラッシングする。出来た毛玉は市販の毛玉取り機等でカットする。
  • 毛玉ができやすい素材の衣類はクリーニングに出す。
  • 自分に合ったサイズを着用する。体形にフィットしているサイズは衣類の擦れが少ないため。
  • 続けて同じ衣類を着ない。なるべく日にちを空けて、衣類を休ませる。



毛玉の発生を減らす洗濯方法

生地同士が擦れることを少なくするには、以下の方法があります。

  • 洗濯機の適正量を守る。衣類を無理やり押し込まないように注意する。
  • 洗濯ネットを使用する。
  • 柔軟剤を使用する。柔軟剤は洗濯時や着用時に摩擦で発生する静電気抑制効果があるため。
  • 靴下やタイツは裏返して洗う。
  • 丈が長いものはゆるく結ぶ。タイツやハイソックスなどの丈が長いものは、洗濯機の中で絡み合う可能性が高いため、ゆるく結び丈を短くすると良い。




抗ピリング加工とは?毛玉防止のための加工技術


最後に抗ピリング加工についてご紹介します。


抗ピリング加工とは

抗ピリング加工は「抗ピル加工」と呼ばれることもあります。

ピリングは繊維の強度があり繊維同士が滑りやすいと発生するため、次のような加工を行って毛玉発生を抑制します。

 

  • 生地の表面を薬品で化学処理して繊維の強度を落とす(毛羽をもろくする)。
  • 長めの毛羽を切ってからガス焼処理で表面の毛羽を少なくする。
  • 樹脂加工で糸の動きを抑える。

 

この加工を「抗ピリング加工」と呼びます。

この加工がされた衣類は、摩擦が生じても毛玉ができにくく、長く美しい見た目を保てるため、毛玉が気になるニットやスウェットなどによく使用されています。




抗ピリング加工のメリット・デメリット

〈メリット〉

抗ピリング加工がされた衣類は、通常のものよりも毛玉ができにくく、日常的に着用しても清潔感を保ちやすくなります。

また、手入れの頻度を減らせるため、メンテナンスが楽になるでしょう。

 

〈デメリット〉

抗ピリング加工は使用や洗濯を重ねるうちに効果が薄れることもあります。

また化学処理や樹脂加工した場合、元の風合いよりも硬く、ごわごわした感じになる場合もあります。



ピリング加工を維持するコツ

抗ピリング加工が施された製品でも、過度な摩擦や洗濯頻度の高さにより、毛玉が少しずつできる場合があります。

長く効果を維持するために、以下のポイントに気を付けてみましょう。

 

  • 洗濯時には洗濯ネットを使い、優しい洗剤で洗う
  • 低温での乾燥や陰干しを心がける
  • 他の衣類との摩擦を避けるため、裏返して洗濯する




ピリング試験

検査機関では、ピリング試験機を用いた規定試験で、以下の1~5級の視覚判定をされます。

一般的には3-4級以上が良い結果となります。

 

  • 判定基準5級:変化なし
  • 4級:わずかな表面毛羽立ち又は部分的にできた毛玉
  • 3級:中程度の表面毛羽立ち又はピリング。部分的な毛玉のサイズと密度。
  • 2級:明瞭な表面毛羽立ち又はピリング。様々なサイズ及び密度の毛玉が生地表面の大部分に見られる。
  • 1級:密集した表面毛羽立ち又は甚だしいピリング。様々なサイズ及び密度の毛玉が生地表面を覆っている。

当社の繊維事業戦略室では簡易式試験機として「洗濯堅牢度テスター」「摩擦堅牢度テスター」と共に、「簡易式ポータブルピリングテスター」を取扱っています。

 




まとめ

冬のファッションアイテムを選ぶ際には、起毛加工や抗ピリング加工といった専門用語を理解しておけば、お買い物がもっと楽しくなります。

お手入れや保管の際には、長く愛用したり加工の効果を維持したりするために素材に適した洗濯方法を心がけましょう。

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